2017/12/07 08:59

年末が近づき寒さが増し、自転車業界も冷え込む季節ですが、年明け早々「お年玉セール」と銘打って、特売で格安の自転車を目玉として売り出すホームセンターも増えてきました。

そのセールのタイミングで、新しい自転車に買い替えようという方も多いのではないでしょうか。

もともと価格の高い自転車もこのタイミングで広告商品として価格が下がる商品ももちろんありますが、年明けの、「この時のためだけに」作られる安い自転車というのも存在します。

自転車業界で間違いなく「価格は正直」と語られています。

つまり簡単に言うと、安いものは間違いなく品質が劣っている、高いものは間違いなく品質が良い、ということです。

今回の記事では、年末年始に限ったことではないですが、ホームセンター等で販売している格安自転車の注意点についてお話していこうと思います。

思い浮かぶ格安自転車といえば、ホームセンターや大型自転車専門店で販売している、10,000円前後の軽快車でしょう。

一般的な自転車の平均価格は大体25,000円前後と言われていますが、その半額以下で買えてしまう自転車とは、いったいどんなものなのでしょうか。

大きな2つのポイントから見ていくことにしましょう。



素材は鉄

ベアリングの締まり具合



まず1つめの素材に関する部分ですが、一般的な自転車のフレーム部分はたいていスチールが良く使われています。

特別軽く作られている自転車にはアルミが使われるのですが、今回注目するのは本体ではなく、ハンドル、サドル下のシートポスト、前後の泥よけを支えている泥よけステー、そしてキャリアです。

自転車本体のフレーム部分を度外視して、これらのパーツだけをよく見ると、この部分だけ、黒いものと銀色のものがあるのを皆さんも見たことがあるのではないでしょうか。

単なるデザインの違いだろう、と思われていた方も多いと思いますが、簡単に言うと、黒いものは安くて質が悪い、銀色のものが一般的かそれ以上、という見方になります(もちろん例外もありますが)。

安い自転車に見られるこの黒いパーツは、素材自体は鉄であり、その上に簡単な塗装がしてあるだけ、というお粗末なものになります。

20,000円以上する自転車の多くに使われている銀色のパーツは、鉄にメッキがしてあるもので、塗装してあるだけの黒いものよりは錆に強いものです。

さらに乗車している人が一番目にし、実際さわる頻度の多いハンドルの部分に関しては、鉄メッキだけでなく、さらに軽くて錆に強いアルミであったり、良い物になるとさらに頑丈なステンレスを使っているものもあります。

駅前に放置されている古い自転車を見かけたとき、もともと黒かったであろうハンドルが、原形をとどめないほどに真っ赤にサビているのを見かけたことはありませんか?

あれは実は恐ろしく古いから錆びているのではなく、安い素材だから錆びているのです。

黒く塗られた塗料は、傷がついたり、直射日光の紫外線でダメージを受けて色褪せ、その上雨風にさらされることによって錆びる原因になります。

自転車を使わない日にはしっかりとカバーをかける、自転車もガレージ内や室内に保管する、などの対策ができない方だと、買ってから2年くらいで真っ赤になってしまう人もいるほどです。

格安自転車に限らず、デザインがおしゃれでオートライト、変速付きでパンクしにくい自転車で25,000円程度の自転車で気に入ったとしても、これらの黒パーツを使っている自転車は、その点でコストを下げている可能性がありますので、注意が必要ですね。



次のポイントはベアリングの締まり具合です。

ベアリングと一言で言っても、普段自転車を利用していてベアリングを意識している人は少ないと思うので、知っている人は少ない部品かと思います。

自転車は回転運動を使って走る乗り物ですので、回転運動をつかさどっている部分、つまり大きく分けて車輪、ペダル、ハンドルの回転する軸の部分に、小さな金属のBB弾のようなボールがいくつか入っており、それらがうまく機能することによって、回転がスムーズに働くかどうかが決まるのです。

このベアリングの締まり具合というのは、回転部分内部の軸とベアリング、それを押さえつけるナットのようなものがあり、そのナットの締め付け具合のことを指しています。

この締め付け具合が緩すぎてもキツすぎてもダメで、ちょうど良い力で締めてある必要があるのです。

緩すぎてもガタが出やすく、内部のベアリングのボールを傷つけて走っているとゴリゴリ異音がするようになったり、締めすぎていても回転する力を押さえつけてしまい、ペダルを漕いでも重い、ハンドルが重くて切りにくい、等の現象が起こってきます。

ほとんどの自転車はメーカーからの出荷時に、このベアリング部分の締め付け具合は確認されていることになっていますが、格安自転車のような機械で大量生産される自転車の場合、各パーツの締め付けトルクが一定でないこともあって、ベアリング部分の締まり具合もまちまちなことがあります。

さらにホームセンターや自転車専門チェーン店等で、入荷してきた7部組の自転車を最終的に組み上げる作業の際、基本的にそのベアリング部分に触れるようなオペレーションになっていません。

ここが落とし穴で、あまり知識のない初心者整備士が簡単に組み上げてしまうと、車輪の回転が重かったり、ペダルが重かったりすることに気が付かずに整備を終わらせてしまうことになってしまいます。

こうして生まれるのが世に言う「ハズレの自転車」ということになります。

メーカー側で多少不備のある自転車が生まれたとしても、ベテラン整備士が最終的に組み上げる段階で調整しなおすことで、しっかりとお客様が問題なく乗れる自転車を用意することができます。

ただ格安自転車というのは、どこの企業においても、構造が単純であることから、初心者練習用の自転車、として入社したての社員や研修生などに整備させることが多いです。

そういった理由もあって、ベアリングの観点からも格安自転車は注意すべき自転車であることがわかります。



以上2つのポイントを見ていただいただけでも、格安自転車がどうして格安なのか、ご理解いただけたのではないでしょうか。

まだまだ細かい点も挙げればキリがないですが、もちろん格安=悪だと言いたいわけではありません。

短期間、短距離しか乗らないからとか、盗難が多くて心配だから、という理由で割り切って乗るのも良いでしょう。

格安自転車を買って10年以上も乗り回している人もいます。

しっかりとした整備士のいる店で買うとか、日常的な手入れができている人、定期的に自転車屋に点検に持って行くなどのメンテナンスを怠らなければ、十分乗れる自転車です。

逆に、それができない、面倒だと考える人にとっては安い自転車はオススメできません。

カバーをかけなくてもサビにくい、空気を入れなくてもパンクしづらい、多少荒く乗っても壊れにくい、そういったメンテナンスフリー性をお金で買う、という意味では一定以上のお金を出して高い自転車を買うべきだと思います。

今や日本はエコの観点やダイエット等の観点からも、車に乗るより自転車!という人が増えています。

昔から身近で、今もなお多くの人が使う乗り物であり、生活に欠かせない乗り物である自転車ですから、値段と自分が求めるものに合った自転車の選び方をしていただきたいと思っています。